ハイテクキッズ・エッセイ2017

テレビゲームまわりのコネタやコラム、ときどき、セキュリティ記事など。

本編第21回『ひとりにひとつ、記憶のカード』(1999年4月ころ)

発掘シリーズです。最近話題の「マイナンバー(制度)」を先取りしてたんで載せてみます。これも1999年の記事なんで古くて裏がとれてないところとかありますがそのままえいやで載せる。

ひとりにひとつ、記憶のカード

●僕の勇者たち~パスワードとバッテリーバックアップ

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ふっかつのじゅもん」。ドラゴンクエスト1と2で、僕らに「きのうの冒険の
続きができる」という夢を叶えてくれた、パスワードのことである。
 パソコンに電源を入れて、またはどこかのシステムにログインする時、自分の
名前(ID)とパスワードを入力する。IDとパスワードで、「僕が操作している」
ことを機械に理解させるためだ。
 ゲームの中のパスワードは、「僕が操作していた」キャラクタのデータや、
どこまでゲームをクリアしたかの情報が含まれている。
 パスワードは、文字列の組み合わせで、たいてい意味のない言葉が並ぶ。
機械にしかわからない、まさに「呪文」なのである。ところが、ゲームの世界が深く
広がるにつれて、わずか20文字程度のパスワードだけでは、正確に「きのうの続き」
は実現できなくなった。そこで、ゲームのカセットに電池を詰めた、『バッテリー
バックアップ』が登場したのである。
 電池は5年程度で切れ、交換しないとゲーム自体ができなくなるのだが、長い
ふっかつのじゅもん」を書かなくてもよくなり、大事にゲーム・カセットを保管
するようになった。
 カセット形式のゲームはバッテリーバックアップ、CD-ROM形式のゲームは本体に
いくらか記録ができるようになった。ファミリーコンピュータディスクシステム
ではゲームディスクに直接書き込みができ、PCエンジンのCD-ROM^2システムや
メガCDシステムでは、別売りのカセットやカードをさしてデータの移動ができた。

プレイステーションの衝撃、サターンの楽しみ

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次世代ゲーム機械』というふれこみで1994年登場した、セガの「サターン」と
ソニー・コンピュータエンタテインメントソニー)の「プレイステーション」。
この2種ではデータの扱い方ではっきり違いがあった。まず、プレイステーション
では、本体の値段を下げるために、本体の記録部分をなくし、安価な「メモリー
カード」を別売りとした。メモリーカードがなければゲームのセーブが全くできない
が、メモリーカード1枚で複数のデータを「持ち歩ける」ようになった。
(カードは1枚・1800えん程度)お気に入りのゲームをまとめたり、1つのゲームに
1枚のカードをぜいたくに使ったり、また「ポケットステーション」(本誌34号の
「レビュー」にて少々説明済み)などカードのデータ自体で遊べる方法が増えた。
 
#友人によると、プレイステーションのゲーム中に、特定の「他作品のデータ」が
 メモリーカードから確認されると、特別にメッセージが流れたりすることがある
 らしい。こういう「使い方」もあるのだな、と感心した。
 
 また、サターンの方は、本体にメモリを加えてあり、さらに外部カセット形式の
「パワーメモリー」で本体の約4倍のデータを管理できるようになっている。シミュ
レーションゲームなどで大容量のゲームをプレイする時には、パワーメモリーが重宝
する。(ちなみに、サターンには時計用電池もあり、設定した時間でゲーム展開が
変わるものも多い。)

●僕らが記憶(メモリ)に打ちこまれる時~国民総背番号制

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 さて、ゲームの世界ではこのようにデータが保管され、多様な遊び方を生み出して
いるが、僕ら自身のデータも、そろそろどこかで完全に管理されようとしている。
 それは以前から「国民総背番号制度」などと称され、賛否両論がある。これは、
現在加入している年金の「年金番号」や、多種の保険の個人番号をすべてひとまとめ
にし、管理しやすくするという案で、実現されるのも時間の問題ではと考えられる。
(ひとつの番号で統一することによって、データ管理の精度が格段に上がるし、
コストも下がるからだ。)
 反対意見の大勢は、この統一番号化によって、僕は1番、君は2番といった
「背番号」が、スポーツ選手の背番号のようにずっとくっつきまわり、あまりいい
印象を与えないから、としている。例えばたった1回、どこかで自分の番号が公開
されてしまえば、あとはそれぞれの「パスワード」を破られれば、自分の情報は
とめどなくもれだしてしまう。
 ゲーム機のそばに転がっているカードや、今使っているフロッピディスク。まだ、
あだ名くらいで、それ以上の自分の情報は書き込めない。もし、「このオレンジの
カードは君のだな?」と手軽に解析できるようになったとしたら、ゲームの新しい
遊び方が生まれるかもしれないし、新しい「背番号」設定が行われるかもしれない。

●光れ、君らしさ~アイデンティティの確立

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 もともと、パスワードの前に入力する『名前』、つまりID(アイディー)とは、
Identity(アイデンティティ)の頭文字を取ったもので、意味は「僕(本人)で
あること、同一性」である。
認証の画面では正確に自分の名前を入力しないとならないが、普段アイデンティティ
は「自分らしさ」という表現で用いられる。
 同じゲームの勇者でも、プレイヤーによって持っているアイテムが違ったり、
あるいは獲得した特技が違ったり、微妙に「すばやさ」や「ヒットポイント」が
違ったりと、「個性」が現れていることだろう。
 みんなの背中に番号が付けられた時、今までよりいっそう「画一化」を懸念する
人がいる。たくさんの番号が、機械に通され、カシャカシャと処理される。どんな
「すがた」をしていても、機械は全部理解しているわけではなくて、命令された
とおりにカシャカシャと番号を飲みこんで吐き出してゆくだけだから。
 僕らは、どんなに役所の手続きが楽になったとしても、どこかで「人間くさい」
部分や「個性」は、なくしたくないと強く思っている。ゲームで言うと、いつでも
体感的なものの人気が高いことが、無意識のうちにこの思いをあらわしているのでは
ないだろうか。
 いちばん大事なことは、僕らが番号なんかに負けないで、自分らしさをもっと
押し出しながら毎日をすごすこと。僕は僕らしく、君は君らしくいることだ。
 
 ちなみに、僕の『メモリーカード』には、最近はまっている「電車でGo!2」から
最初に買った「ジャンピング・フラッシュ!」まで、ほんとうにいろいろな
やりかけのゲーム・データが詰まっている。ほとんど途中になってしまっているが、
自分のペースで、いつかエンディングを見るまでは、これらの記録を消すことも
ないだろう。

2015年に読み返してみての自分ツッコミ

3DSのメモリーカードというかSDカード(New3DSだとmicroSD)が、無印PSのメモリーカードとは違って、まさに「個人」をひもづけたものだなあと思う。まあこれは本体もセットじゃないと使えないんで、セーブデータだけ持ちだしとかできないんですけど。(そういうのでいえばamiiboが現代のメモリーカードに近いんか?)

今読み返してみておもしろいのは「ふっかつのじゅもん」部分を「パスワード」ととらえているところだなあ。いまだとパスワードは本人を認証するもので、そこにステータスとか冒険状況は含まれてないものだと思える。
ゲームユーザーのお子さんでいくとNNID(ニンテンドーのネットワークID)なんかが身近といえば身近なんでしょうねえ。www.nintendo.co.jp

以前パスワード(のセキュリティ)についてはこんな記事を書いてました。

hke.hatenablog.jp